奥田庵

楽しんで書ける場所が欲しいなって、ここにひっそりと、僕の遊び場を作った感じです。小説的体調管理。自由。

ろくでもない世界で、ろくでもなさを嘆く、ろくでもなさについて。

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口が悪いばあさん。

「ああいうものはろくでもないんだ」

と、よく批判している。

 

その場では目立つし、そこそこ鋭さがあるような発言に聞こえているということで、一目置かれたりするのだけれど、口が悪いので、どんどん孤独になっていった。

 

旦那とは離婚、子供は独立、年金暮らし。

 

「ろくでもないものに、ろくでもない媚びを売り、ろくでもない時間を費やし、ろくでもない賃金をもらって、ろくでもない人間関係の中で、ろくでもない愛想笑いを浮かべ、ろくでもないお世辞を言って、ろくでもない死に方していくやつらに、あたしは一ミリも興味ないのさ」

「では、ろくでもなくないものとは、どういうものなのですか?」

と、無鉄砲な若者が聞いた。

口が悪いばあさんは、一瞬、考えた後、

「そんなものはないね」

と、言った。

「じゃあ、ろくでもないものしかないじゃないですか」

「ああ、世界のすべてはろくでもないのさ」

「では、ろくでもないものの世界で、ろくでもないと言い続ける、ろくでもなさとはなんなのでしょう?」

「それはね、あたい自身が、ろくでもないということを知っているということさ。つまり、あたいはあたいのろくでもなさを嘆きつつ、そのろくでもなさに一ミリも興味がわかない。つまり、ろくでもないあたしはろくでもない世界において、ろくでもない、自分に興味がわかないというろくでもなさというわけさ」

「自分に絶望し、自分を嘆いている」

無鉄砲な若者がそう言うと、口の悪いばあさんは、自嘲し、

「ろくでもない」

と言った。

 

無鉄砲な若者は、スマホを取り出すと、打ち込み系のリズムを流し始めた。

その曲のリズムに合わせ、クネクネと動き始める。

口が悪いばあさんは、それを見ながら、

「ろくでもないね」と、呟いた。

 

無鉄砲な若者は、それでもクネクネを続け、口の悪いばあさんも、クネろと促す。

婆さんは、口は悪いが、身体は正直だった。

二人、リズムに合わせ、クネクネと踊る。

ろくでもない踊りではあった。

けど、なんか楽しい。

 

「まったく、ろくでもないね……」

と、婆さんはクネクネしながら、静かな涙を流した。

 

 

 

※noteはじめました。

https://note.com/okuda_an