奥田庵

小説だったり、映画だったり。犬だったり。

ルチェルナのこと 第十五章・その①

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十五

 

まず海老名だ。

それで見つけられないのなら静岡だ。最悪クリエイティブメゾンを調べれば、セミナーの合宿場所ぐらい書かれているはずだ。とにかく、なにかしらの手はあるはず、向かう。それが約束、瑞希との約束。「必ず助けに行くよ」

高速道路の入り口に着くと、一気にアクセルを踏んだ。

高速で走らせる軽トラは、タイヤと地面が擦れる音が車内中に響き、振動も激しかった。僕は一心不乱にスピードを出しながら、目の前の車を追い越し続ける。頭の中ではひたすら余計なことが巡り続ける。

瑞希の笑顔、無邪気さを失うわけにはいかない、言いわけはどうしよう、とりあえず配達は終えたけれど、どのタイミングで状況を説明しようか、色々怒られる、でも良い、瑞希がいればそれでいいじゃないか、バイトも就職もダメになるかもしれない、目前の車が遅い、すぐ着け、苦しい、間に合ってくれ!

「あぁぁぁぁっっっ」

僕は散らかった混乱を振り切るように大声を上げた。

と、目の前の車と接触しそうになり、慌てて横へ逃げた、停まるな、あとで捕まってもいい、瑞希を助ける!

 

比較的早く、海老名インターに着いた。着いたは良いけれど、物凄い車の数、そして、瑞希の電話からは五十分近く過ぎている。きっと次へ移動している。僕は車で、一通り駐車された車両に目を凝らし、白いハイエース二台と紺色のレガシィが停まってないか調べた。

ハイエースが一台停まっていたが、そこにはオレンジのつなぎを着た作業員が数名、車内でケラケラ笑いながら買ってきたフランクフルトや焼きそばを食べていた。違う。

違う、次だ。どこだ。ここじゃない、とにかく走らせよう!

 

僕は海老名インターを出て、目の前の車両を追い抜くことに意識を集中した。ハイエース二台と紺色のレガシィ

瑞希になにが起こっているのか? 「栗田君、助けて、ヤバいかも」

サンセット会のうわさが頭にちらつく。拉致、洗脳、囲い込み、無表情になる会員、両親との対立、殺人事件、多額の資金によるマスコミの囲い込み、芸能人の広告塔、それらすべてを他人事のように思っていた自分が、瑞希に降りかかっているかもしれない危機。実感がほしい。いや、瑞希さえ助けることができればそれでいい!

 

車を一気に走らせた。途中スポーツカーが追い抜かれたのに腹を立て、何度も横に並び、後ろから煽り、追い抜こうとしてきたが、構わず走り続けた。百二十キロは優に超えていた。

海老名の次に大きな足柄インターへ入った。

インターに車両で入り、駐車している車を見て回った。

ハイエース二台と紺のレガシィ。大量の車両。僕は瞬きを忘れるほど、駐車されてる車両を凝視した。

「あ、あった……」

インターの建物から離れた駐車スペースに並んで、ハイエース二台とレガシィが駐車していた。

探し当てた後、実際それが本当に探している車両なのか理解できず、しばらく息を止めて、その車両が認識できるまで視線が固まった。

 

ここに瑞希がいる。

 

僕は建物近くに駐車した。車を見張るか、建物内を探すか。車にはまだ誰も乗っている形跡はなかった。救い出す。どうやって?

とにかく瑞希の顔を見たい。探そう。

僕は軽トラを降りて、足柄インターの建物へ入った。

 

 

 

エイプリルフールに百歳で死ぬということ

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