奥田庵

小説だったり、映画だったり。犬だったり。

嘘友人代表。

f:id:jetoku33:20190323220839j:plain

 

人気のない道に入ると、あの子が立っていた。

私は見なかった振りをして、引き返そうとすると、全速力でこっちへ走ってきた。

私も走った。

追いかけてくるあの子。

逃げる私。

「待って!」

「やだ!」

「悪いことしないから、待って!」

逃げる私、追いかけるあの子。

飛びつかれ、二人して転がり、倒れた。

「ハアハアハアハアハア」

「はあ、はあ、はぁ」

二人の息遣いが響く。

 

するとあの子が立ち上がり、私の方を向いた。

「手紙を書いてきました」

「?」

あの子は手紙をポケットから出すと読み始めた。

「みっちゃんへ。本当におめでとう。みっちゃんの友達でいたことは私の誇りでした。うまくクラスになじめなかった私を、積極的に話しかけてくれたのはみっちゃんでした。二人で下校の時、よくコンビニでアンマンを食べましたね。熱いあんこをホフホフと二人で食べている時間は、とても幸せだったよ。だけど、実は私と友達でいたことが罰ゲームだと知ったときはショックでした。私はどうしていいか分からなくなって、カッターナイフを振り回して暴れたね。誰もケガさせることはなくてよかった。嘘の友達だったけれど、みっちゃんが結婚するって知って、せめてお祝いを言いたかったんです。みっちゃん、おめでとう。アンマンの味は忘れません」

あの子は手紙を読みながら泣いていた。

私も涙がこぼれていた。

あの子は手紙を読み終わると、それを丁寧に折りたたみ、私に差し出した。

私は無言で受け取った。

 

「じゃあ」

あの子が歩きだしたとき、

「待って」

私はあの子を呼び止めていた。

「私もそっちだから」

 

私とあの子は、無言で歩いた。

コンビニに寄り、アンマンを買った。

無言で食べた。

「……」

「……」

何を言っていいのかは分からない。

 

コンビニの駐車場から、土手でサックスを吹いている女子高生が見えた。

私とあの子はアンマンをホフホフしながら近づくと、

無言で女子高生の下手なサックスを聴いた。

おならみたいな音が続いた。

「ぷっ」

なんだか、ちよっと笑ってしまった。

 

「おめでとう」

とあの子が言った。

「ありがとう」

と、私もやっと言えた。

 

 

 

エイプリルフールに百歳で死ぬということ

エイプリルフールに百歳で死ぬということ