奥田庵

小説だったり、映画だったり。犬だったり。

足音にロック・無料。1/25の夕方まで。

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足音にロック

足音にロック

 

 「足音にロック」奥田徹   

あらすじ

死の足音が聞こえる。
人材派遣会社で営業を担当している福岡はある日ゆっくりと歩み寄る足音のようなものを感じ、寒気と共に死を感じる。その足音は日に日に自分へ近づいていると感じ、怯えていた。
「この足音が近づき、目の前に現れた時、僕はきっと死ぬ」

 

 

足音にロックの感想はこちらや、

toruokuda.hatenablog.com

 

こちらでも。ありがたいです。本当に。

toruokuda.hatenablog.com

 

なぜか、海外kindleでもレビュー。日本語で。

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 今回は、第一章のみ公開します。良かったら読んでください。

 

「足音にロック」

 

 

漠然としたイメージだけど、「丸く温かくて柔らかなもの」を大事に抱え、それが「壊されないように」と、僕は願う。

純粋な物が傷つけられることがないまま、どうか幸せであって欲しいと。例えば、バス停で見かけたベビーカーの中にいる赤ん坊の柔らかな微笑や、暖かな日差しに目を細め座っている犬。少し背伸びしてオシャレした少女の今日への期待。反応を期待して家族へお土産を買うサラリーマン。それらが、どうか「温かなもの」として、決して傷つけられませんようにと。

あまり人には言えないけれど、それらのことを思うとき、僕はたまに涙を流す。失われないで欲しいと、ただそれだけの理由で。

 

夕焼けを背にしたシルエットが目に焼き付いて残っている。あれはいったい誰だったのか僕には未だ分からない。九月も後半に入り、申し訳程度の小雨が降り、すぐに止んだ。蒸し暑さがあたりに充満し、僕の体は連日の疲労とともに一時停止していた。ただ止めどなく流れおちる汗が、身体の異常を警告していた。

 

謎の足音が聞こえるようになったのは、いつからか覚えていない。

 

最初に耳にしたのは確か終電車の中。僕はいつの間にか寝てしまい、突如、首を絞められたかのように呼吸を忘れ、ガクっと何かを踏み外し、目を覚ました。

「ハア、ハア、フゥ……」

記憶が飛び混乱の中、辺りを見回した。車両には誰も乗っておらず、僕はユックリと状況と混乱をすり合わせ、ここが電車の車両内、僕は仕事の帰り、いつの間にか寝てしまったのだろうなど、一つ一つを確認した。

携帯電話で時間を見ようと内ポケットを探ると、財布が抜き取られていた。

「……」

まあ、そうかと、諦めに似た倦怠感が身体を包んだと同時に、実際の世界にいる生々しさのような感覚が僕を包んだ。

ズボンのポケットに手を入れ携帯は盗まれていないことを確認した。何か対処なり考えないといけないんだろうなと思いながらも、全身がそれを拒絶していた。とても疲れていたから。

「まあ、いいか……」

一体、何がいいのか自分でも理解出来ぬまま、ただただ、その状態の中に留まった。

身体から力が抜け、向かいの窓の外に目線を置き、その先の流れる暗闇に同化する感覚。窓の外の暗闇。時折よぎる光。

連日、果てが見えない仕事が続いていた。その疲弊による空っぽな自分。感情は何処かへ消えていた。

 

コツん、コツん、コツん、コツん……

 

そんな時だった。隣の車両(だと思う)から、こちらへ向かって来る足音らしき音を耳にした。なぜか寒気がよぎった。

足音は微かに耳に届き確かに継続しているのだが、その実体が来ない。僕は隣の車両へ目を向けたが、ドアの硝子の先、隣の車両は誰も乗っている様子はなく、こちらへ向かって歩く人影も見当たらない。

「……」

しばらくして足音が止まった。一分に満たないような時間だったと思う。僕は肩を軽く回し、寒気を逃がした。

消えた足音を不思議に思ったりもしたが、それよりまだ泥のように眠りたかった。実際このまま泥になっても良いと思えるくらいに。

 

終点の立川まで眠り、駅員に起こされ、Suicaで外へ出て、線路沿いの公園のベンチで仮眠を取った。

始発で家へ戻り軽くシャワーを浴び、幾らかのお金をポケットに入れ、すぐに出勤。

「銀行にカード停止の連絡をしないとな……」と頭の奥、ずいぶんと片隅の方で理解しているのだが、その意識とは別に身体は自動的に動き、今日の仕事のノルマを頭に詰め込む。与えられたことをやり、求められた動きをして、僕の中を通過させた。

足音はその出来事を境に耳にするようになった。場所や時間はいつもバラバラで、街中や、バスの中、営業の訪問先など、唐突にそれは聞こえ、僕は一瞬の寒気と共にしばし硬直する。

 

足音は聞こえるたび、ゆっくりと僕に近づいている気がした。

そのことが徐々に恐怖となっていく。いつか、あの寒気とともに聞こえる足音の実態が、僕の前に現れる。

「死の足音」

僕はそれを確信していた。あれは死の足音だ。死が僕に近づいているんだ。ゆっくりと、ジワジワと警告するように。

 

「最近顔色悪いな」

先輩の工藤さんが事務所のトイレで顔を合わせた時、声をかけてきた。

「そうですかねぇ……」

「連勤どれくらい続いてるの?」

「えー、今月は一度だけ土曜日に休みましたよ」

「殺されるよなこの仕事に」

「いや、ホント」

 

死の足音が聞こえるようになり、僕は前に営業先で聞いた死刑囚の話を思い出した。

死刑囚は独房で監視員の足音を聞き分けられると言う。毎日、いつ自分が殺されるかに怯え独房で過ごす時間。耳にするのは巡回する監視員の足音。「この足音はあいつだ」と。しかし、その監視員たちと違う足音が聞こえる時がある。刑務が執行される時だ。つまり、いつもと違う足音を耳にする時、誰かに死が訪れる。 まさに死の足音。

 

その「死の足音」が僕に追いつき、姿を現そうとしている。

コツん、コツん、コツん、コツん……

足音が聞こえた。寒気がよぎる。

その緩やかな歩調がジワジワと僕に近づき、また消えた。

 

 

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足音にロック

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