奥田庵

小説だったり、映画だったり。犬だったり。

訓練。

 

 

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斜め前に親子らしき客が座っていた。時間を見ると深夜である。

母親と息子。母親らしき女性は少し小太りで、地味なセーターに地味なスカート、地味な髪型で、地味な顔つきをしていた。息子らしき少年も地味なシャツに地味な短パン、地味な坊主頭だった。

そう思いつつ、今、余計な判断をしているなと落ち込んだ。

地味ではない。素朴なのだ。

いちいち言葉にトゲがある方を選択している。そこは問題だ。

悪気はない。素朴はそもそも好きなのだ。

 

僕の判断基準の問題? それもあるだろう。

 

息子らしき少年がショートケーキを食べ、メロンソーダを飲んでいる。

母親らしき女性はそれを見つめ、目の前に口をつけないでいる珈琲が置かれている。

 

勝手に想像する。きっとお金もなくて、泊まる場所もなくて、でも息子にはなにか喜んでほしくて、ああいったことになってるのかもしれないと。

たぶん、違うだろう。勝手な想像なのだ。

けど、今僕に必要なのは事実ではなく、自らの考え方に対する根本的な変化なのだ。

こじつけでもいい。

 

親子らしき素朴な二人は無口だった。

ケーキを食べ、素朴な小太りの女性に向け少年が笑顔を向けた。それに、小太りの素朴な女性は笑顔を返した。

 

「……」

僕は「笑顔か」と思っていた。 

 

しばらくして親子らしき二人は立ち上がると、そのまま出入り口に向かい、店を出て行った。

僕はガラス越しに歩いていく親子らしき二人を眺めながら、余計な思考が巡る。

 

ざわざわする。

 

余計なことを言いたい。

でも、言わない。

 

言葉にする必要はないのだ。

 

 

 

くらげ

くらげ