小説kinema

小説だったり、映画だったりの作業スペース。散らかってます。

かまってちゃんの罠。

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十二月だというのに、まだ暖かい日が続いていた。

早めに家を出てしまったので、仕事が始まる前に公園で少し時間を潰した。

 

ベンチの横で、自転車の手入れをしている中年のおじさんがいた。

僕は特に気にせず、ベンチに腰かけた。

ベンチの右隅に、黒い手袋が揃えて置いてあった。

 

僕は、なんとなく空と木の枝を眺めていた。

すると、自転車の手入れしていた男がなにやら囁き、自転車を押しながら公園を出て行った。

そして、公園の周りをゆっくりと自転車で走りながら、

「三丁目……三丁目!」

と、叫んでいた。

どうも僕に向けられた言葉のようだった。

どういう意味なのだろうか。

 

とたんに、ベンチの右隅に置かれた手袋が気になった。

なにかの暗号だったのだろうか?

「三丁目!」

まだ言っている。

「……」

 

その不可解について、少しだけ考えようとしたがやめた。

きっと、そういうことについていちいち考えない訓練の方のが今は大事なのだ。

僕は軽く溜息を吐き、公園を後にした。

 

 

小さな僕がカナブンと消えた

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