奥田庵

小説だったり、映画だったり。犬だったり。

待つ。

 

 

 あまり強くない雨が降っていた。

 僕は慌てて、駅前に停まっていたバスに乗車した。

 外はもう暗くなっていて、車内の灯りが少し強く感じた。

 ある程度、座席は乗客で埋まっていたが、まだ座れる余地がある。

 僕は一番後ろの席に座り、バスが発車するのを待つことにした。

 車内は、静かだった。

 人工的な明かりの下、雨粒がバスを叩く微かな音。

 誰も声を発しない。エンジンの音もしない。

 ただ、バスの発車を待っている時間。

「出発は六時三十一分です」

 運転手が車内アナウンスをした。

 時間を確認して、まだ十分以上あるんだと思った。

 僕は誰も視線を合わせていない車内で、少しだけホッとしている。

 いずれバスは発車される。僕はそれを待つだけで良いんだ。

 ここにいる人達も、ただ、それを待っている。

 静かな時間。少しずつ座席が埋まっていく。

 でも、まだ余地はある。

 悪くない。

 

 

不器用なアナログレコードの挑戦

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