小説kinema

小説だったり、映画だったりの作業スペース。散らかってます。

文章のかけら 7

蒸し暑いのはしんどいですね。

どこにも行きたくなくなります。

ということで、今回も行く当てのない文章のかけらたちです。

 

○元犯人と刑事の夫婦。「私を捕まえて」と、逃げる妻。

 

○借金と私。と言う作文を子供が書いていた。意外と大作。

作家デビュー。

 

●前から犬を散歩中の人。

 その犬が、昔飼っていた死んだ犬に似ている。

「撫でさせてもらっていいですか?」

「あの、うちの子、噛むかもしれませんけど」

 犬に手を差し出す。と、犬は僕を迎え入れ、撫でさせてくれた。

「あ」

 飼い主が驚いた顔をしている。

 僕は犬を撫でるのを止め、

「ありがとうございました」

「いえいえ、飼い主の私より飼い主みたいです」

 一時だけ、時間がさかのぼった気がした。

 あの頃は、今もここにある。

 

○ざしきおやじ

自分にしか見えないおっさん。

 

○迷子の警察官との友情。

 

○精神病院時代の同室の仲間。

 

●毎日励ましてくれるおばちゃん。

「ほら、そんなんじゃ、バレーボールできないよ」

 って、なぜバレー? けど優しい。謎のバレーボールおばちゃん。

 

●彼はいつも中古の軽自動車をいじっていた。

 六万円で買ってきた中古車。

「これで日本一周するんだ」

 と、初めて手に入れた自家用車に興奮していた。

 小さな頃から車が好きで、いつも同じミニカーで遊んでいた。

 車を運転することはずっと憧れだった。

 免許証も自動車学校へ行く資金が無く、独学で取得した。

 初めて買った中古車は、二回乗っただけで動かなくなった。

 けれど、故障しても、それをいじっているだけでも幸せだった。

 ある日、ナンバープレートが外され捨てられた大量の車が放置されている場所を見つけた。

 彼はそこから部品を拝借して、自分の車をチューンナップした。

「日本一周。俺の相棒……」

 突然の台風が田舎町を襲った。

 池の水は氾濫、土砂崩れ、家屋崩壊。

「助けてー」と、声が聞こえる。

 彼の中古車も心酔の危機。

 彼は運転席に乗り込み、

「動けっ!」

 エンジンが吹く、と同時に車が変形して、ロボットに。

 空を飛び、次々と逃げ遅れた人を助け、山まで避難。

 彼の改造車ロボットのおかげで多くの人が救われた。

 

「さて……」

 彼は車に乗り、日本一周をしようとしたが、エンジンがかからない。

「また故障か……」

 彼は今日も車をいじっている。

 

「おい、いくぞ」

「……」

「くだらねぇこと考えるな。いくぞ」

「くだらねぇのかなぁ」

恋をしていた。

 

「……」

 無言電話が続いた。

 数日続いた。

 しばらく無視した。

 着信がなくなった。

 数日後、久々に着信。

 出ると、

「……友達になってください」

「……」

 僕は無言のまま電話を切った。

  

 

●重い扉。

 川で囲まれた大きな町があり、中に入るためには門をくぐらなければならない。

 その門はいつも開いていた扉が、今日、唐突に閉まっていた。

 声を上げるが、扉開かない。

「おーい、開けてくれ! 家に帰れないだろうが」

 扉は開かない。

 次々に、扉の周りに人々が群がり始める。

 そして、次々に声を上げるが、扉は開かない。

「よし、俺たちで扉をこじ開けよう!」

 人々の群れは協力し合い、扉をこじ開けようとするがびくともしない。

「差し入れです」

 見かねた川向こうの商店街がおにぎりの差し入れをくれる。

 酒も入り、そのうち宴会。

 久々に再会する人、突然プロポーズを始める人。

 扉は開かない。

 人々が程よく酔い、

「まあ、いいじゃねぇか、色々と楽しかったしよ」

 そのうち扉の前で雑魚寝。

 みんな酔っ払い眠ってしまう。

 目を覚ましたとき、

「おい、あれ見ろ!」

 扉が開いた。

 中から警備員がのそのそと出てくる。

「あれ、あんたたち何してるの?」

「いや、扉が開かなくて」

「ああ、昨日から自動ドアになって、十時に閉まることになったんだよ」

 未来は突然やってくる。

「ほら、ここに書いてあるべ」

 いつの世も、注意書きは小さいものだ。

 

 

エイプリルフールに百歳で死ぬということ

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