小説kinema

小説だったり、映画だったりの作業スペース。散らかってます。

文章のかけら 5

 

ということで、今回も行き場のない文章たちを。

 

○朝日ばばあ。毎日朝日を浴びている。下ネタじじいが恋をした。下ネタしか言えない。

 

○どうでもいい問題について考えるのが好きだった。

 それは本当にどうでもいいようなことで、誰にも話すような事柄でもなかった。

 例えば、靴ひもの新しい呼び方についてとか、枯葉の斬新な処理方法や、目の前の他人が、また僕と再会するとすれば、どんな形が最適かとか。

 それを聞いて「とても興味深い」などと言ってくれる人などいないし、よほど親しくなくて、二人きりでずっと密室で過ごさないといけないときでもない限り、そんなどうでもいい話は耳にすることもない。

 だけど、僕はかれこれ、このどうでもいい話をすでに一時間近く話している。

「どうでもいいことだけどさ」

「うん」

「なぜ、僕の話を聞いてるのさ」

 彼女は口元に笑みを作ると、目の前から突然消えた。

 そもそも存在していなかったかのように。

 どうでもいい話をしているときは、まともなことを聞いてはいけないのだ。

 

○待ち合わせ、彼女が来ない。二年待ってる。名物に。

 

○疲れ取り屋 

 疲れをとるためにマッサージ屋を探した。

 街をぶらぶらと歩いていると如何わしい店が多い気がする。と、そこに「疲れ取り屋」の看板が目に留まった。

 なんだこの店。その場で携帯で調べてみたが載っていない。値段が二千円。疲れとります。と書かれている。

 僕は興味本位で店の中に入った。

 すると、水着を着た美女が出てきた。如何わしい店だろうか。

「いらっしゃいませ」

「あのー、看板を見て入ったんですけど」

「あ、じゃあ二千円で」

 僕は二千円を差し出した。そして、その美女と向かい合って座った。「私は最近、寝不足が続いていてね」

 と美女が話し始めた。それからずっと「料理を作るのが嫌」「徒歩五十分」だとか、色々と話をするが、一向に施術をする感じではない。

「あの……」

「はい?」

「いったい何を話しているんですか?」

「だって、ここ疲れ取り屋ですから」

「え?」

「私、とっても疲れとります」

「……」

 

○夜空に星は見えず。でも、星はある。

それを知ってる。

 

○僕を結んだロープを切る彼女のハサミには、子猫のシールが貼られていた。

 彼女は可愛いシールを集めるのが好きなんだ。

 

○「あなたは幸せでいてください」

 その一文だけしか書けなかった。

「それでは失礼します」

 僕は、それをつけたし、ネット回線を切った。

 

○元彼のお下がりを渡される。複雑な気持ち。試されている?

 

○息子がマジシャン。ダジャレ好き。そんなグレかた。

 

○空を眺めることは、一人で歩くことに似ている。

 一人で歩いているときによく空を眺めているからかだろうか。

 いや、違う。

 前向きな溜息。

 

○効率

起・サバサバと効率を求めて動く人に憧れる。

承・色々と邪魔だと思うものを切っていく。

転・ふと寂しくなって効率の悪いことをする。「一人になる」「珈琲を飲む」

結・久しぶりに電話してみる。

 

○真に受ける性格なのは自覚していた。

「人には親切にしよう」

 と、言われたとして、その親切のために自分を犠牲にしてしまうようなところがある。困っている人に親切にしなくてはと、相手に電車代を出してあげて、自分は歩いて帰る、二時間かけて、なんてことをしてしまうのだ。

「暴力で物事は解決しない」

 なんて言葉を聞いて、自分はいわれなき暴力を受けているのに、じっと我慢してしまう。

「笑っているといいことがある」

 などと言われ、ニコニコしていると、服をわざと汚されたり、食べ物を投げつけられたりして、でも我慢してニコニコ笑う。

 なんで、そんなことになってしまうのか。

 僕はいつしかうまく笑えなくなっていた。

 カフェにて。

 隣の席でカップルがアップルパイについて話していた。

 話はふくらみ、いつしか「特別なアップルパイ」へと変化していた。

 僕も食べたてみたくなった。

 スマホで位置を調べ店へ向かった。

 なにか期待するときは楽しい。

 プレゼントを約束された日が近づくように。そんな感じ。

「いらっしゃいませ」

 比較的小さなお店に、所狭しとパンが並んでいる。

 クリーム、チョコ、ソーセージ。沢山の種類。

 アップルパイを一つ。カレーパンを一つ。

 店員の女の子が可愛かった。ベレー帽に真っ赤なエプロン。ちょうど良い笑顔。

 パン屋の可愛い女の子って「理想の恋」みたいだなと思った。

「ここのアップルパイが美味しいと聞いて」

 と、聞かれてもいないのにおべっかをつかう。

「ありがとうございました」

 アップルパイはそれほどでもなかった。

 カレーパンは美味しかった。

 もう一度行くほどでもない。

 けど、可愛いパン屋の店員さんは気になった。

 理想の恋。

「カレーパンがヒットでした」

 と言って、カレーパンとクリームパンを買った。

「ありがとうございました」

 パンを食べながら帰り道。

 僕はなにをしているんだと思った。

 けど、週三で通ってもいいかもと計画を立てていた。

 少し幸せ。

 僕は、うまく笑えるようになりたいと思っていた。

  

○小学生の頃、好きだった女の子に勇気を出して話しかけてみた。

 少し大げさにふざけて、

「ぱぉ、ぽぉ」

 と言ったら笑ってくれた。

 その笑顔がなんども脳内で再生された。

 リピートリピート。

 大人になって、久々に再会したとき、そのことを話した。

 すっかり忘れているようだった。

 僕ががっかりすると、彼女は

「ぱぉ、ぱぉ」と言って笑った。

 思い出は更新された。

 

 

○絵本ネタ・ぼわぼわ

 少年が、少し可愛い感じで「おねだり」したことに落ち込む。

 その夜、ぼわぼわという音とともに、身体がむずがゆくなる。

 ぼわぼわ。ぼわぼわ。不気味な音。

 はっと気づくと、体中からぼわぼわと毛が生えていく。

 と、同時に頭がはげて行く。ぼわぼわ。

 とんでもない量の毛。ぼわぼわ。

 はっと目を覚ますと。元通り。安心する。

 が、ふとみると、少しすね毛が濃くなった気がした。

 

○うんちくを語ると撃たれる社会。

「いいかい、経済ってのは情報とか……」

 ドキューンっ!

「ギャー」

 

○邪険にして切った父親からの電話。

実は父親はホームレスになっていて、ヘルプの電話だった。

だけど事実は言えないまま。死ぬかも。

 

○夜な夜な、ピアノの音が聞こえる。

 死んだ娘を思い、父親が弾いていた。

「こっそり練習していたんだ」

 父親は、音色を聞きながら娘と会話をしていた。

 なんて言ってた。

「口も聞きたくないってさ」

 

 

不器用なアナログレコードの挑戦

不器用なアナログレコードの挑戦