小説kinema

小説だったり、映画だったりの作業スペース。散らかってます。

予兆

 

  馬がうんちするのを眺めながら、僕もそろそろだなと思った。

「この馬、何で飼ってるんですか?」

「さあ、弟が飼ってんだよ。よく知らね」

 と、馬に干し草をあげているおじさんが言った。

 

 田舎はみんな車で移動するので、ほとんど誰とも合わない。けど、子供の登下校は歩きなので、その時間帯は気にする。逆に言えば、子供以外歩いていないので、僕が歩いていると、珍しい人みたいな感じになる。不審者じゃないよって顔をする。

 でも、その「気持ちだけ不審者じゃない人」を装っている自分の姿が、よほど怪しいんじゃないかと、また気にする。

  畑を眺めてたら、トコトコ歩いてきた猫がうんちをした。

 うんちをよく見る日だ。

 うんちをよく見る日?

 

 僕は、それを確かめてみたくなる。うんちをする動物はここらへんにいないだろうか? 誰かが犬を飼っていたな。見に行ってみよう。そして、たまたまうんちでもしようものなら、今日は「うんちをよく見る日」だ。

  そう思い、ふらふらと犬を飼っていた、あのうちへと歩く。

 こう、見えて、僕は随分と悩んでいたのだ。

 ただの暇人ではないのだ。

 

 僕の命を狙っていると、手紙が来た。勿論、いたずらだろうとほっといたら、携帯電話に着信があって「命を狙われてますよ」と言われた。

「なぜ?」

「思い出してください。そろそろですよ」

「そろそろ?」

 電話はそこで切れた。

 何を思い出せばいいのか? 何がそろそろなのか?

 

 大きな家だ。けど、犬は外飼い。犬小屋の横に、柴犬が寝ている。さて、うんちはするのか? 犬が、目を覚まし、僕に気付いた。

 おもむろに起き上がると、お尻を持ち上げ、前足に力を入れ始めた。お、うんち? しかし、そのポーズのままなかなか進まない。

 そろそろか? そろそろだな?

「馬鹿め、いまそろそろだと思ったろ?」

 誰だ? しかし、周りには誰もいない。

「俺だよ」

 犬がうんちをする格好で、僕を見つめていた。お前か? その訴えるような目。犬独特のうんちをするときのあの見つめる目。お前が、うんちをする直前で僕に話しかけているというのか?

「人間ってのは馬鹿だな」

 え?

 犬がうんちをした。その途端、声は聴こえなくなった。

 なんだ? 

 ふと、見ると、下校中の子供たちが歩いてくるのが分かった。僕は慌てて、家へと引き換えし、自分に起きたことを整理する。馬と猫と犬のうんち。そして、犬が訴えるような目。声が聞こえた。

 狙われている。そろそろ?

 と、その前に、僕はトイレへ行ってうんちをした。

 まず、僕がそろそろだったんだ。

 その時だ。突然、トイレを囲っていた壁が崩壊し、僕がうんちしている姿がむき出しになった。

子供が横切り、恥ずかしいと思った瞬間、トイレがロケットのように火を噴き、飛びあがった! どうしよう、紙が無いぞっ! 僕はトイレに座ったまま雲を突き抜けたっ!

「私は、神じゃ」

 目の前に紙ならぬ神がいた。光り輝き、白い服。天使の輪。杖。老人。

「そろそろですか?」

「そろそろだな」

 僕は、悟り、トイレと共に突き落とされる。

 大きな川に落ち、流され、滝へと巻き込まれた。

 うんちのようだ。

 

 僕は消えゆく意識の中で、「まあ水に流そう」と思っていた。