小説kinema

小説だったり、映画だったりの作業スペース。散らかってます。

カフェの背が高いお姉さん。

カフェがいっぱいあった。
いくつかのお店に夫婦で行ったけど、何回も訪問したお店はそんなになかった。人見知りなんでね。通っているうちに、気を使っていただけたんだろうか、支払いの時に世間話をされたりすると、「うっ……」となって、しばらく行かないようになったり。夫婦で「レジどっちが行く?」と、余計なところで譲り合う。まー、ほっとかれて、無視されない辺りが心地いいのです。
んで、何回か行って、ほっとかれて、ほどよく居心地がいい店があったんで、夫婦で通った。
そこの店員の背の高いお姉さんは、不器用な感じで、一生懸命対応している姿が好感持てた。新人なのかな? で、コップが空になると「失礼します」って何度も水を入れに来てくれた。
たぶん、口を酸っぱくして言われているのだろう。とにかく、こっちがコップを空にするのが気が引けるほど、水に集中してた。狭い店内で、慣れてない感じ、独特のバタバタしちゃう感じで、とても頑張っているように見えた。
そして、何度か注意を受けているところも見た。ランチの食器の下げ方が店主のおじさんが気に入らなかったのだろう。手本を見せるように、「こうやって持って、こう拭いて」なんて言いながら、「素早く」みたいな指導。そういうのを目撃すると余計応援したくなる。決して手を抜いているわけでもないし、かといって接客が不愉快でもない。
たぶん指導する側からすると「悪いところ」が目につくのがもどかしいんだろうけど、それを指摘している姿がどう映っているのかは本人は分かっていないのだろう。店主らしきおじさんの「すみませんねー」と気を配っている的アピールは、ちょっとこっちが萎縮する。
うまく場を回しているつもりの人が、実はただ人をあしらっている時ってのがたまにある。そうされると、ちょっと距離が出来るから、あまり近づきたくなくなる。そのお店は、その背の高いお姉さんの頑張りもあって、しばらく通ってたんだけど、レジの際にママみたいな人に毎回、「今日はお休みですか?」と訊かれるのが嫌でしばらく行かなくなった。
んで、久しぶりに行ってみると、あの背の高いお姉さんはいなくなっていた。で、また別の女性店員がいて、その人の動きは「呑み込みが良い」感じが漂う、器用な接客だった。
ンで思う。「あー、あの人は辞めちゃって、この人が入って、で仕込まれたんだろうな、あのオジサンに」と。
あの背の高い姉ちゃんが、変に自信を無くすことなく、素敵な毎日を送っているといいなぁなんて思った。
田舎の小さなカフェでのどかで素敵な毎日を想像していたのに「珈琲すら運べないなんて」と、自分を否定するようなことになってたら可哀そうだなって。届かないだろうけど、ここで。
あなたの接客は心地よかったです。あの店の中で歴代一です。
しかしまー、また行かなくなる。なんとなく。で、間を開けて行ったら、今度は、器用な店員さんもいなくなっていて、店主らしきあのオジサンが接客をしていた。そして「あ……」と思うわけです。あの器用な人も辞めちゃって、結局おじさん自身で接客するのねと。
(妄想ですよここから)結局、良かれと思って指導していたことは、相手の居場所を奪うことでしかなくって、それは当然、自分がやらなくてはならなくなる。人に任せることが出来ない。
しかし、オジサンの接客はやはり、僕には「萎縮」を感じさせるものになってしまうので、また行かなくなる。
でもまー、狭いけど、雰囲気はシャレているし、ダバダバとボサノバっぽい曲がずっとかかっていて、ファッション誌とか読めて、山ん中にあるから、そこそこ人気店なのです。
だから、あの接客を好きな人もきっといるのだろうから、まあ、良いんじゃないの? なんて思う。
で、今日、「最後になるだろうから」と夫婦で行ってみた。
オジサンが接客してた。で、店内で雑誌か何かの撮影で、カメラマンがケーキとか、店内とか照明をセットして撮影してた。
撮影する度にチカチカ、照明が光る。
で、夫婦で
「結構、チカチカするね」
「気になる?」
「いや、平気」
なんて小声で話してて、カウンターの下へ雑誌を戻しに行くと、あのオジサンが
「すみません、チカチカして」と、声をかけてきた。
「いえいえいえ」
なんて言いながら、萎縮する。
あんな小声を聞かれて、牽制されている?
ドキドキ。

まー、気遣いって分類で。
さようなら。そして、あの背の高い元店員さんよ、幸せに。





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で、毎日23時に更新してます。18話まで続く予定です。