小説kinema

奥田徹の小説だったり、映画だったりの作業スペース。散らかってます。

凄い人。

よく行くファミレスで、物凄くテキパキと仕事をする店員さんがいる。
フロアを一人で任されているのだけど、混んでるときはとんでもなく混むので、注文を取り、レジに立ち、案内して、片付けして、料理を運ぶ。
呼び出しのブザーがひっきりなしに鳴って、ずっと動き回っている。
しかも笑顔で。凄い。
嫁と二人で感心してる。
「あの人は凄い」
あの働きを時給でやっているのだろうかって話になった。
同じ店でも、その人がいる時といない時では全く別の店に感じる。
一度、とんでもなく辛そうな表情で作業してる店員さんがいて、
怒りと、哀しみが混じりあい、失恋の末、詐欺にあい、殺人の計画を立て始めたような表情だったので、
「顔を合わせないでいよう。うつるから」
と、二人で目を逸らした。
きっと、あの混乱を、一人で任された後だったのだろう。
スネル気持ちも分かる。全てを放り投げて逃げ出したくなると思う。
ブザーの集中砲火、「今、手が空いてないの分かるだろ!」と怒鳴ってもおかしくないぐらい忙しいのだ。でもそんなこと言えない。
私はただ、一つ一つをこなしていくのみなの。机の上には片付けられないままの食器、怒りとともに溜まっていく仕事。しかし鳴り響くブザー。ぐつぐつぐつぐつ。燃えたぎる何かの音が聴こえそうだった。
だけどブザーを押す僕……。
そんな忙しい状況を、毎回しっかりこなしているその店員さん。挨拶も心地よく、前に聞かれたことは二度と訊かれず。ブザーが鳴れば声をだし、まー、凄いのだ。
ああいう人は、出世するんだろうなぁと思いつつ、
「時給なんだよね。たぶん」と、その理不尽さに他人事なのに憤る。
誰かが見てて、何か素晴らしいことが起きればいいのに。(大まかだな)

けど、ああいう凄い人は、きっと色々とうまくいっているに違いないと、
何だか勝手に納得して、いつも気分よく店を出ます。
凄いなぁ。