小説kinema

小説だったり、映画だったりの作業スペース。散らかってます。

町内放送。



町内放送のスピーカーから、警察が情報提供を呼びかけることがたまにある。
さっきも82歳のお婆ちゃんが午後二時過ぎから行方不明になっていると放送があった。
東京にいるときは夜も明るかったし、町内放送なんてあまりイメージないけれど、
こっちは冬場は夕方の六時を過ぎたらかなり真っ暗。
街灯が裸電球みたいな粗末なものが、数キロ先に一つとか。



ほぼ闇の中、遠くの家の灯りを感じつつ、精神を研ぎ澄まし歩かないと危ない。
溝にはまったり、転んだり、迷子になっりする。
僕も一度、駅から片道四十分の道のりを歩いて帰ったら、闇の中歩き続け、
感覚が研ぎ澄まされて、野性を感じた気がした。
今、身体全体が空間を捕えているぞ!

だから、夜七時半を過ぎたこの時間は、真夜中なみの暗さと静けさ。
そこでのお婆ちゃん情報依頼。
気になる。捜しに行った方がいいのかと思わせる。
町内放送はエリアごとに呼びかけられているので、遠くから始まり、
近くで聴こえ、通り過ぎた先でまた放送されていく。
そのエコー感が、緊張を増幅させる。
けど、発見はいつも早く「先ほどの放送で……」と、十分ほどで無事保護されたと
新たな放送が。よかったよかった。
良かったなお婆ちゃん。
ホッと一息。

お婆ちゃんも闇に研ぎ澄まされ「野性化されて発見され……」とかだったら驚くけど。