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犬だが

$ドキュメントエッセイ・リターンズ。-犬だが

 犬になって一年が過ぎた。
 なにも犬になろうと思ってなった訳じゃなく、ある日突然犬だったのだ。

 最初は戸惑った。
 こんなの自分じゃないと訴えたかったがどうも「今日は様子がおかしいね」と思われるぐらいで、全く通じない。
 ドッグフードを出され屈辱な気分で、食事を拒否した。
 しかし腹が減ったので二日目に口にした。
 涙が出た。頭を撫でられた。
 唐揚げが食べたかった。
 半年が過ぎ、次第に慣れてきた。
 というか、受け入れる事から全てが始まると言い聞かせた。
 七ヶ月ぐらいした時、散歩中、愕然とした。
 俺がいたのだ。
 人間の俺。
 途方にくれ、なにやらもしゃもしゃ食べながら、道端をウロウロしていた。
「ワンワン!」
 吠えてみた。
 が、特に気づく様子も無く通り過ぎて行った。
 なんだあいつは……
 腑に落ちた気がした。
 過去ばかり考えてもしかたない。
 俺はもうあいつじゃない。

 あんな奴であってはならない。
 犬だが、諦めずに生きる。
 そう誓った。
 今日もまだ犬だ。
 だが、生きている。
 トイレは覚えた。