小説kinema

小説だったり、映画だったりの作業スペース。散らかってます。

やめてる

$ドキュメントエッセイ・リターンズ。-夜道


 昔はここら辺一帯でよく人がいなくなったらしい。
 夜中に出掛けた男が帰って来ず、その次の朝に何故かモグラの死体が畑で見つかる。そんな昔話がある。
 さすがに今では聞かないが、聞かないだけで実際は起きているのかもしれない。

 二年前、夜中に畑の横を歩いていて背丈ほどある葉っぱの奥から
「やめて!」
 と女性の小さな声が聴こえた。
 葉っぱの奥は薄暗く、奇妙な空間への入口の様に見えた。
 僕は何かあったのかと、恐怖に怯えながらも、中に入ると、
「うわっ!」
 足が地面に埋まり動けなくなった。
「やめるか?」
 声が聞こえた。
 僕は暗闇を見回すと、足元にモグラがいた。
 可愛い女性の声だったが、ただのモグラだ。
「やめるか?」
 もう一度聞かれた。
 僕はとりあえず
「やめます」
 と答えると、モグラは地面に潜り、その瞬間足が自由に動き、慌てて畑の外へ出た。
 いったい何をやめれば良いのだろう?
 僕はその事を思い出すと、しっかりと「やめているのか」恐怖を覚える。
 やめていると良いな……。
 とりあえず最近は丸くなったねとよく言われる。
 きっとやめているのだろう……。