小説kinema

小説だったり、映画だったりの作業スペース。散らかってます。

耳かき

$ドキュメントエッセイ・リターンズ。-耳かき


 アキが、家で耳かきをしながらふと思いついた。
 この耳かきを隠してみよう。
 深い意味は無く、何となくそうしてみたくなったのだ。

 旦那のハルは耳かきが好きだ。好きだけどいつも何処かに置き忘れる。
「耳かき知らない?」
 と月に数回聞かれる。
「知らない」
 と答えた後、ふとハルを見ると既に耳かきをしている。
 アキにはそれが謎だった。
 いつの間に……。
 それを思い出し、余計隠したくなった。

 絶対解らない場所に隠そう。
 近所の畑の横道に埋めてしまおう。
 アキは早速耳かきを持って畑へ行った。素手で土を触ったのが久しぶりで、やりながら楽しくなった。考えてたより、深く掘り、耳かきを埋めた。
 埋めてる最中、誰か通った時の為、言い訳を幾つか考えた。タイムカプセルを埋めたとか、深く掘ると粘土になってるとか、スイカの種を埋めたとか、どれも怪しいなと思いつつ結局、誰も通らなかった。

 耳かきを埋めた。
 アキはかなり満足していた。
 満足してる自分に少し自嘲した。


 数日後、
「耳かき知らない?」
 とハルが聞いた。
 アキがニンマリとして振り向くと
「え?」
「へ?」
 ハルは既に耳かきをしていた。

「耳かきあったの?」
 不思議に思ったアキは聞いてみた。

 ハルは頷くとニヤリと笑った……。