奥田庵

楽しんで書ける場所が欲しいなって、ここにひっそりと、僕の遊び場を作った感じです。小説的体調管理。自由。

お知らせ。

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お知らせ。

 

現在、こちらのブログから、noteに記事を移行しております。

随時更新中のミニ小説も、noteの方で更新を続けていきたいと思います。

 

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もしよろしければ、そちらの方を覗いていただけると嬉しいです。

このブログに関しましては、時期を見て整理していきたいと思っております。

 

今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

奥田庵。

 

 

不器用でオシャレじゃない人。

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おしゃれな場所というのに相変わらず慣れない。

たまに仕事の流れで、下北沢のカフェとか、恵比寿のレストランとか、行ったときに、引く。

 

昔、知り合いが、バーテンのバイトをやっていて、いくつかカクテルなんかを作れるようになって、

「正式にうちで働いてよ」

と、言われた。

待遇もいいし、お金の面でも今までと比べて安定するし、何より、仕事にも慣れてきている。

けれど、そう言われた瞬間に、彼は引いてしまったらしい。

 

彼はバーテンをやりながら、昼間に乾物屋でお土産を売るバイトをしていた。そこで、

「疲れただろ」

と、麦茶を出されたりすると、嬉しかった。

 

この二つのバイトをしつつ、「将来」を漠然と模索していると言っていた。

特にやりたいことはないのだけれど、やりたいと思えることは探し続けていきたいというスタンスで、安い換気扇が壊れたアパートで独り暮らしをしていた。

 

彼は、何も決まってはいない状態で、バイトを昼夜こなし、どうしようもなく不安になる日も多々あったのだけれど、バーテンとして正式に働くことは選べなかった。

 

「おばちゃんの麦茶を失うのが怖かったんです」

と、彼は言った。

 

結局彼は、バーテンのバイトを辞めて、低収入でうろうろすることになっていたのだけれど、特に不満そうではなかった。

 

僕もおしゃれな場所に行って、引く自分に出会う時、その彼のことを少し思い出す。

「落ち着かない」という状態には、それなりに理由があって、けれど、誰彼に理解されようなんていちいち考えなくていい。

自分の心地よさについては、自分で最終的な責任を持ちさえすればいいんだと、彼の決断を思い出す。

 

そういう不器用さは、好き。

 

 

 

 

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ろくでもない世界で、ろくでもなさを嘆く、ろくでもなさについて。

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口が悪いばあさん。

「ああいうものはろくでもないんだ」

と、よく批判している。

 

その場では目立つし、そこそこ鋭さがあるような発言に聞こえているということで、一目置かれたりするのだけれど、口が悪いので、どんどん孤独になっていった。

 

旦那とは離婚、子供は独立、年金暮らし。

 

「ろくでもないものに、ろくでもない媚びを売り、ろくでもない時間を費やし、ろくでもない賃金をもらって、ろくでもない人間関係の中で、ろくでもない愛想笑いを浮かべ、ろくでもないお世辞を言って、ろくでもない死に方していくやつらに、あたしは一ミリも興味ないのさ」

「では、ろくでもなくないものとは、どういうものなのですか?」

と、無鉄砲な若者が聞いた。

口が悪いばあさんは、一瞬、考えた後、

「そんなものはないね」

と、言った。

「じゃあ、ろくでもないものしかないじゃないですか」

「ああ、世界のすべてはろくでもないのさ」

「では、ろくでもないものの世界で、ろくでもないと言い続ける、ろくでもなさとはなんなのでしょう?」

「それはね、あたい自身が、ろくでもないということを知っているということさ。つまり、あたいはあたいのろくでもなさを嘆きつつ、そのろくでもなさに一ミリも興味がわかない。つまり、ろくでもないあたしはろくでもない世界において、ろくでもない、自分に興味がわかないというろくでもなさというわけさ」

「自分に絶望し、自分を嘆いている」

無鉄砲な若者がそう言うと、口の悪いばあさんは、自嘲し、

「ろくでもない」

と言った。

 

無鉄砲な若者は、スマホを取り出すと、打ち込み系のリズムを流し始めた。

その曲のリズムに合わせ、クネクネと動き始める。

口が悪いばあさんは、それを見ながら、

「ろくでもないね」と、呟いた。

 

無鉄砲な若者は、それでもクネクネを続け、口の悪いばあさんも、クネろと促す。

婆さんは、口は悪いが、身体は正直だった。

二人、リズムに合わせ、クネクネと踊る。

ろくでもない踊りではあった。

けど、なんか楽しい。

 

「まったく、ろくでもないね……」

と、婆さんはクネクネしながら、静かな涙を流した。

 

 

 

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こどもの眼。

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電車の座席に座っているときに、子供たちの集団が乗ってきた。

それぞれの親も一緒で、子供たちは全部で四人。

おそろいの服に、おそろいの帽子。たぶん、制服なのだろう。

年齢的には、五歳か六歳。女の子。

みんなマスクしている。

親たちも四人。マスクしている。で話している。

 

女の子たちは、無言。

子供が制服を着て、四人もいて、静かだという状況。しかも、表情は読み取れず、目だけ出ている状態。

 

「……」

 

非常に物分かりが良さそうに思える。

と、同時に、子供だからといって侮れないということぐらいは知っている。

子供が子供社会の中で、一括りにされつつも、集団の中でそれぞれの主張を通したり、譲ったり、計算したり、苦しんだりしながら、その役割をこなしていく日々にいること。

「子供」は意外に、沢山のことを理解している。

僕の幼少期の記憶は、「勉強」を詰め込まれていない分だけ、状況に対し敏感だったことは覚えている。

ただ、経験と言語の知識量で、気持ちを表現する場合、唐突感がでてしまうということはあるのだけれど、四歳、五歳は既に侮れないのだ。

 

ということで、目の前の無言の幼児たちに、プレッシャーを感じている。

お母さん連中が、「コロナが」とか「あそこの家で」とか「この前通販で」と次々と会話を繰り出す中で、無言の幼児四人衆。

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

僕は、幼児たちの無言と、感情を押し込める視線に敬意を示し、スマホを見るのを止めて、少しだけ姿勢よく座った。

 

 

 

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無防備な寝顔に対する敬意と忘れられる時間の愛おしさ。

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部屋に帰ると、同級生の二人が酔っぱらって眠っていた。

一人はクラスで人気があった女子である。もう一人はもその親友で、吹奏楽部のメガネが似合う女子。

 

女子二人が、僕の部屋に来た。

二人はジャニーズのコンサートを見るために東京に来て、その会場の近くに僕が住んでいることを知り、SNSを通して連絡してきた。

 

最初は、三人でたこ焼きをしながら飲んでいたのだけれど、僕が一度、仕事のトラブルで会社へ行って、戻ってきて、こういう感じになっている。

 

「……」

よく眠っている。

 

起こして、二人が宿泊しているホテルまで送って、さよならする。

今後の予定を見積もれば、そういうことなのだけれど、僕も、少し疲れていたことと、あと、三十分ぐらいは会話もしたい。

会話を楽しみ、送っていく。その前に少しだけ疲れをとりたい。

 

そのインターバルをとりたいために、少しだけ二人を寝かせておこうと思った。

 

僕は、二人を眺め。

その寝顔を見た。

 

綺麗な顔して眠っているとは、言い難い表情。

クラスで人気だった女子は、アイプチのせいなのか、半目が開いていて、口をとがらせて、「シュプゥー」と、数秒おきに寝息を立てていた。

 

メガネが似合う女子は、メガネを外し、顔半分くらい、大きな口を開けて眠っていた。

 

「……」

 

女子の寝顔。

いや、たまたま、今の表情がこういうことになっているが、二人とも綺麗で可愛らしくて、性格も活発で、一緒にいて楽しい。

まあ、誰でも眠るのだけれど、眠るって、面白いよなぁ。と改めて考えた。

起きている。眠っている。起きている。眠っている。どちらも本人であり、生命が継続中である状態。どちらが本質なのか。

眠っている時の「停止」。その表情。

 

異性が二人、僕の部屋にいるということに対する状況への配慮よりも先に、「寝顔」について、考えていると、生きているということに対し、愛おしさが出てくる。そして、この無防備さに対し、ある程度の敬意を示したいと思った。明日のコンサートを楽しんで、今日のことなんか忘れてしまえばいい。

そういう、時間になればいいなと。

 

と、半目開いていた、クラスで人気だった女子が、目を覚ました。

 

「あ、お帰り」

「おはよう」

「寝ちゃった……わ」

「ん?」

「見てこの寝顔ヤバくない?」

と、メガネ似合う女子の寝顔を見て、ケラケラ笑い、スマホで写真を撮り始めた。

 

その後、僕達は三人は、三十分ほど昔話をして、宿泊するホテルに二人を送り別れた。

 

 

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